2012年07月04日

 初夏三題

 軒下に つばめも帰る 雨宿り

 都会ではあまり見なくなったが、地方へ行くと、家屋や駅などの軒下に巣をつくっている。
 電線に並んで休むすがたは、初夏の風物詩である。
 ツバメが低く飛ぶと雨が降るという諺があるように、梅雨の頃は、空中を飛ぶ虫が少なくなるので、低空飛行して虫を捕らえる。
 虫を追って、知面近くを低く飛ぶスピードは速く、そこから、佐々木小次郎のツバメ返しということばがうまれたようだ。
 ツバメは渡り鳥で、春、暖かくなった頃、南方から飛来して、営巣活動をおこない、ヒナが巣立つ秋口には、東南アジアへ渡り去る。
 つばめが帰るというのは、春になると、冬のあいだ留守だった空巣に帰ってくるからである。
 雨宿りと、帰ってきたツバメと出会いが、梅雨の風情をいっそう深くさせる。

 咲き満ちて あとは散り行く 定めかな

 咲き満ちるというと、桜が連想される。
 散り行くすがたが見事なのも、桜である。
 だが、ここでは、江戸時代、武士がこよなく愛したサクラソウである。
 夏の暑さと乾燥には弱く、清楚な花を咲かせたあと、ちょうど梅雨明けの頃、あっけなく枯れて、休眠にはいる。
 江戸時代は、旗本や御家人など武士階級が、新品種の作出を競い合い、現在、栽培されている約300品種のうち、半数以上が、江戸時代からの株分けによってつたえられたという。
 武士が、サクラソウを愛好するようになったのは、江戸湾に注ぎむ隅田川、荒川、中川の氾濫を予防するため、流域に、大雨の際に調整池の役割をはたす広大な原を整備した古事に因む。
 この原っぱに群生していたのが、サクラソウで、視察にきた将軍家綱がこれを持ち帰って、鉢植えとしたことから、随行してきた武士たちが、真似たという。
 その地が、原生サクラソウの自生地として、国の特別天然記念物に指定されているた田島ヶ原(埼玉県さいたま市桜区)である。
 サクラソウの楚々として美しいさまは、たしかに、日本人の好みなのである。

 永き日や 暮れなずむ空の 赤とんぼ

 永き日は、長くて暮れなずむ春の一日のことで、俳句では、永日(えいじつ)や日永(ひなが)とともに春の季語である。
 時間が季語になるところに、俳句のおもしろさ、奥行きがあるように思う。
 短夜(夏)や夜長(秋)、短日(冬)も、似た表現だが、こちらは、説明的で、詩情に乏しい。
 永き日には、眠気を誘うようなゆるやかな気分があり、真冬なら真っ暗なはずの空に、宵の明星が微かに光っている。
 定時の退社から、まっすぐ、家路につくことはまれだが、時折、そんなことがあると、永き日ののんびりとした気分を味わえるのである。
posted by office YM at 12:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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